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プレスリリース

CO₂濃度分布と在室者の位置情報を基に室内の感染リスク分布を可視化

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~マイクロ飛沫感染・飛沫感染を統合した感染リスク評価技術を開発~

順天堂大学<学長 新井一>・大学院医学研究科感染制御科学の堀賢 教授と清水建設㈱<社長 井上和幸>はこのほど、室内の CO2濃度分布と在室者の位置情報を基に、マイクロ飛沫感染と飛沫感染の両面から室内における新型コロナウイルスの感染リスクを評価し、建物空間内でのリスク分布をモニター画面上で可視化するシステムを共同開発しました。この共同開発は、日常生活や業務の場面に感染対策が予め織り込まれた建築「Pandemic Ready」の実現に向けた研究開発の一環です。ウィズコロナの社会環境下、室内空間を安心して利用するためには、感染リスクを低減する取り組みが欠かせません。本システムは、施設利用者や管理者に空間内の感染リスクの大小をリアルタイムに提示し、状況に応じた対策や行動を促すためのツールとして開発したものです。

新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫、マイクロ飛沫、接触とされています。このうち飛沫とマイクロ飛沫の代表的な発生源は、人の呼吸や発話、咳などであり、感染リスクの大きさは室内のCO2濃度と相関関係にあると考えられます。一方、CO2濃度が低く換気状態が良好であっても、在室者が密集・密接していれば飛沫感染のリスクが残ります。こうした背景のもと、マイクロ飛沫感染と飛沫感染を統合した室内感染リスク分布の可視化技術を開発しました。

本システムは、室内のCO2濃度分布からマイクロ飛沫感染リスク、在室者の位置情報から飛沫感染リスクを評価します。マイクロ飛沫感染のリスク評価では、CO2センサーが検知した室内複数点のCO2濃度から空間補間手法を用いて室内全体の濃度分布を推定した後、新たに開発した計算手法により、在室者が吸引する可能性がある感染性粒子量の分布に変換します。一方、飛沫感染のリスク評価では、近距離無線通信を利用した高精度測位システムで取得した在室者の位置情報を基に、人からの距離に応じて減少する飛沫の到達率を勘案して、飛沫由来の感染性粒子吸引量を算出します。最終的に、マイクロ飛沫、飛沫それぞれに起因する感染性粒子吸引量を基に室内各所の感染リスクを総合的に評価し、リスクレベルを色分けした分布図をモニター画面に表示します。

本システムを室内感染リスクのモニタリングに利用することで、例えば、フリーアドレスオフィスの利用者が入口のディスプレイや個人のスマートフォンで室内の状況を事前に確認し、リスクの小さい座席を選んで執務できるようになります。また、施設管理者も、空調の外気導入量の調整や窓開けのタイミングを適切に判断することが可能になります。さらに、モニタリングデータと空調機器を連携させることで、リスクの高い空間を局所的に換気する自動制御機能も構築できます。

一方、モニタリングを目的とした常設利用のみならず、1~2日程度の仮設利用により、感染リスクの高い場所を特定し、感染症対策の改善を図ることもできます。

共同開発にあたっては、堀教授の医学的知見と助言を基に、清水建設㈱が感染リスク算出手法、空間補間手法による濃度分布作成技術を開発しました。両者による「Pandemic Ready」の共同研究では、マイクロ飛沫の挙動解明にも取り組んでおり、その成果を本システムにフィードバックすることで、リスク評価のさらなる精度向上につなげていく考えです。

参 考

▲ 本システムによる感染リスク算出プロセス
用語説明
  • マイクロ飛沫
    咳やくしゃみから出た飛沫のうち、5μm(ミクロン)以上の径のものは、水分を含み重いので1~2m程度しか飛散しませんが、5μm未満のものは空中でしばらくの間漂うと考えられています。空気感染のもととなる飛沫核(1~2μm相当)よりやや大きく5μm未満のものをマイクロ飛沫といい、これが2mを超えた距離にまで広がる可能性が指摘されています。
  • Pandemic Ready
    商標登録を申請中の用語で、広く感染対策を備えた建築を意味します。
  • 空間補間手法
    センサーなどを用いて計測した実測値などの既知のデータを用いて、周辺のデータを予測する手法です。